隔世の感


10月はカミングアウトデーもあるためか、LGBTがらみのイベントや講座も多いようだ。


都内のデパートの壁面には支援広告も今では珍しくない。



玄関そばにはレインボーフラッグも。



パレードは近年行っていない。


最近のトピックは親の介護、パートナーと入る墓のこと、と生活臭に汚染されすぎ。



実家の近くで、LGBTの家族向けの講座があるとのことで参加させてもらった。


私が10代の頃、このローカルな沿線には夢も希望も無かった。


私が勝手にシャットアウトしていたためだが。


私が都内でビョーキになって、回復している間に


かつて地上を走っていたローカルな沿線はどこもかしこも高架線になり、


今では、自宅のある都内のN区より、いろいろ便利になっている。


今回の講座も、市の教育委員会が後援だそう。



今ではすっかり忘れてしまっていたが


いろいろ思い出した。


中学の頃、辞書で「同性愛」を調べたら、意味するところは〝変態〟と書いてあり


もう二度とこのことは考えないようにしようと決めたこと。


考えないようにしても、思春期の身体や感情は困ったことになっていたが。


まあ、誰にも言わなければわからないだろうし、そのうち治るだろうと思っていた。


男性と異性交遊して〝荒治療〟もしてみた。


20代のはじめの頃に、


仕事場の関係で「ハーヴェイミルクの時代」というアメリカのドキュメンタリー映画を観た。


仕事場はわりと政治的に革新的な人ばかりだったので


同性愛者のことは二の次で、社会派ドキュメンタリーということでこの映画が選ばれたようだ。


当時は、異性愛者のフリをして暮らしていたので画面に映し出される世界に驚いていた。



画面の中で、(字幕だったが)あなたの大切な人たちにカムアウトしなさい、と言っている。

当時は〝カムアウト〟という日本語訳だった。


ええーっ?そんなことができるわけがない!


この映画を観て勇気をもらったという人は多いが、


私は逆。


かえって、檻の中にいる自分を感じて気分が悪くなった。


映画の中ではパレードの様子も映し出されている。


日本では100年経っても無理みたい。


それにハーヴェイとやらは市長にもなったような人だからカムアウトできるんだろうけど、


頭が悪くてブスな自分が〝カムアウト〟したらマズいことがトリプルになるだけではないか。


実際、周囲には同性の人を好きになったことがきっかけで鬱病になって自殺してしまった人がいた。


生前話を聞いたことがあった。


「私は彼女を妹のように想っているだけ、そんな変態じゃない」と泣いていた。


映画は文字通り映画で、私のいる現実とは絶望的な開きがあった。



だけど、運命的な出会いがあった。


相手の人は異性愛者。


恋愛感情はモルヒネ並みの脳内麻薬。


どう思われてもいいやと思えて、すべてを告白した。


それからそれまで白黒テレビだった世界がカラーテレビになったようだった。


せめて自分がなんなのか、自分でわかっていないと。




ほんの三十年くらい前のこと。



ちなみに、今の辞書で「同性愛」を調べてみると、かのような人を侮辱した言葉は見当たらない。